令和7年【 第16回福井県ビルメンテナンスこども絵画コンクール 総評 】
福井市美術館 学芸員 前田詩織
今年の応募作品全体の傾向として、カラフルで明るい雰囲気の作品が多かったことが印象的でした。
お掃除は私たちの暮らしには欠かせないものであり、どんなに時代が移ろい便利な世の中になっても決してなくなることはありません。
未来ではお掃除はどんなふうになっているのでしょう?そんな想像をふくらませて、子どもたちがそれぞれに思い描く未来のお掃除像を描いた作品は、夢や希望を感じさせてくれました。
最優秀賞、三上日菜子さんの「キンチャクガニとかめさんのうみのおそうじ」は、モチーフを大きくとらえたダイナミックな画面構成と優しい色調が目を引きます。
海中風景の表現には絵の具のにじみやぼかしが効果的に使われ、力強い線で海の生き物たちをいきいきと描いています。
キンチャクガニは鮮やかな身体の模様、そしてイソギンチャクをハサミで抱えた姿がユニークなカニですが、作者の三上さんはイソギンチャクを雑巾に見立て、キンチャクガニが海の中のお掃除に励む様子を描いている点に独創性があり、本コンクールのテーマにも見事に合った作品になっていました。
協会賞の川端悠作さん「ともに生きる」は自然や機械との共生社会を描いた作品です。
森の中で、可愛らしい動物や魚たちが掃除機ロボットと一緒にお掃除をしていますが、そのロボットにもよく見ると鹿の角のようなものがあり、機械でありながらも有機的な印象です。
明るい色遣いで画面全体が調和しており、安定感のある作品に仕上げられています。
館長賞には安富文昭さん「ロボットと花火大会」が選出されました。
楽しそうにお掃除するロボットたちの背景には、大きな花火が何発も打ち上がっています。
夜空には列車も走っていて車窓にも笑顔の子どもたちやロボットの顔が見えます。
鮮やかでメリハリのある色遣いや、動きを感じさせる画面が、明るく気持ちの良い、楽しい作品になっています。
ロボットたちが活躍し、友達のように一緒に宇宙旅行にも行ける、そんな未来はそう遠くないのかもしれません。
金賞に選ばれた西井柊焚さん「海の中のおそうじやさん」は、虹色の空を背景に、カラフルなイルカや魚たちが跳びはね、ゴミを集めて海を綺麗にしている様子を描いた作品で、躍動的です。
既成概念にとらわれずたくさんの色を遣って、元気いっぱいにお掃除する海の生き物たちを描いてくれました。
銀賞のよこいきいとさん「ピカリンキラキラそうじき」。未来の掃除機は、形も可愛らしく、人間と一緒に楽しくお掃除してくれるのでしょう。紙のすみずみまで丁寧に描かれています。
明るいピンク色の画面から、ハッピーな気分が伝わってくるようです。お掃除をして部屋が綺麗になると、とても気持ちが良いですね。
松田蒼史さん「カメレオンのおそうじ大作せん」で、中央に大きく描かれた赤い体のカメレオンは、今にも画面から飛び出してきそう。
背中には小さな子どもたちを乗せ、長い舌や腕のようなものを伸ばしてゴミを集めています。
綺麗になった森には花が咲き、鳥が歌っているようです。絵本の一場面のような、ワクワクする一枚です。
鈴木結さん「ゴミを星にリサイクル」は、詩的で可愛らしい作品。
後ろ向きに立つ女の子が手にした機械からは、色とりどりの星が飛び出して夜空を彩っています。
未来の世界ではゴミを星に変えて輝かせることができるようになるかもしれない…そんな場面を幻想的に表しており、印象に残る作品でした。
奥村颯斗さんは「昔の自然を取りもどそう」と題した作品で、現代の社会問題を取り上げてくれました。
線で区切られたコマの中には、ドローンや高層ビル街、また鴇や海亀など、高度に発達する人間社会と失われつつある里山の風景が描かれ、今の社会の様々な面がリアルに切り取られているようです。
進化を続ける世の中で、忘れてはいけないものがあることを訴えかけるような作品にハッとさせられました。
銅賞のとよおかみなとさん「ゴミすてロボット」は、中央に大きく描かれたロボットが目に飛び込んできます。
ビビッドな色遣いで、堂々としたお掃除ロボットはなんだか誇らしげです。
腕は掃除機になっているのでしょうか、足元にもモップがついているように見えます。こんなロボットがいたら広い場所のお掃除でも心強いですね。
籾垣有沙さん「ハチのリサイクルロボット」は、メカニックな蜂たちが空き缶やペットボトルを集めている場面を描いています。
大きな巣の穴にはゴミが分別して収められていて、細かいところまで工夫して描かれていることに驚かされました。発想の面白さと描写の丁寧さが光る一枚でした。
戸田美月さん「海の中のおそうじたんけん中」では、潜水お掃除ロボットが海底へと進んでいくようです。
操縦しているのは作者の戸田さんご本人でしょうか。
タコやカニ、ヒトデといった海の生物たちが、ロボットを見守っているようにも見えます。お掃除をしながら海の中を探検しているようで、とても楽しい作品です。
齋藤麻子さん「フクイティタンと街中おそうじ」では、恐竜と人間の女の子が協力してビルのお掃除をしている様子を表しています。
長い頸が特徴的なフクイティタンが女の子を地上高く持ち上げ、お掃除のお手伝いです。
翼竜もバケツを持って飛んできました。
みんなが共存し、協力して街を綺麗にする、誰もが幸せに暮らせる未来の姿を描いてくれました。









